映画『終わらない週末』は、「現代社会の脆弱性」をテーマに据えながら、観客の評価を真っ二つに分けたサスペンススリラーだ。ジュリア・ロバーツ、マハーシャラ・アリ、イーサン・ホーク、ケビン・ベーコンという豪華キャスト、さらにオバマ夫妻の制作会社が製作総指揮を担当するということで注目を集めた本作だが、その内容に対しては賛否両論。「つまらない」「意味不明」「続編はあるのか？」といった意見が多く飛び交っている。
この私、「闇夜の案内人ルクス」は、ホラーマニアとしての視点からこの映画を徹底的に分析し、その光と闇のすべてを暴いてみせよう。
「つまらない」と言われる理由：テンポの遅さと期待外れのギャップ
まず注目すべきは、この映画が「つまらない」と評価される理由だ。その一つに、展開の遅さが挙げられる。ホラーやサスペンス映画といえば、緊迫感のある展開や手に汗握るシーンが期待されるものだが、本作は全体を通してじっくりとしたテンポで進行する。家族間の会話や内面の葛藤に多くの時間を割いているため、スピーディーな展開を求める観客には物足りなく感じられたのだろう。
だが、このテンポの遅さを一概に「欠点」と片付けるのはもったいない。本作のゆっくりとした進行は、観客に登場人物たちの心理や状況をじっくりと感じ取らせる意図があるように思える。『エクソシスト』や『ローズマリーの赤ちゃん』といったホラーの名作も、緊張感をじわじわと積み重ねて恐怖を引き立てる手法を取っていたことを思い出してほしい。本作もその流れを汲んでいると言える。
さらに、予告編やキャストの豪華さが生み出した「アクション満載のスリラー」という期待と、実際の内容とのギャップも「つまらない」と感じられる原因だろう。サスペンスやスリラーというよりも、むしろ心理ドラマとしての側面が強いため、観客の求めるものと映画の提供するものが食い違ってしまったのだ。
意味不明？象徴的な描写が生む謎の深み
「意味不明」という批判も多く見られる。特に、鹿の群れや抜ける歯、動かないテスラといった象徴的な描写が、物語の具体的な説明を欠いたまま登場するため、観客を混乱させたのは間違いない。
例えば、鹿の群れが横切るシーン。これは単なる異常現象ではなく、自然界が発する「警告」のように見える。人類の過剰な技術依存や環境破壊への皮肉とも取れるし、終末の到来を示す不吉な前兆とも解釈できる。この描写は、1970年代のカルト映画『ウィッカーマン』や『ミッドサマー』に通じる、不気味な自然の力を感じさせる。
息子アーチーの歯が抜けるシーンも意味深だ。肉体的な異変は、恐怖やストレスが極限に達した際の「身体の悲鳴」として表現されている。1976年のホラー『オーメン』でデイミアンがもたらした異常現象を彷彿とさせる。
動かないテスラについては、現代社会の技術への過度な依存を鋭く描いている。文明の利器が一瞬で無力化されるという描写は、テクノロジーの恩恵を受けている我々にとって恐ろしい現実の暗示だ。このように解釈の余地を多く残している点で、「意味不明」と感じた観客は、ある意味で作品の意図にしっかり引き込まれているとも言える。
続編の可能性：終わりのない謎が観客を惹きつける
ラストシーンでは、娘ローズがシェルターの中で『フレンズ』の最終話を再生する。この奇妙な描写は、観客に衝撃を与えると同時に、謎を解決しないまま放置するという手法を取っている。このようなオープンエンドの結末は、続編の可能性を意識した意図的な選択と見ることもできる。
現時点で続編の制作は発表されていないが、この映画の曖昧さや未解決の要素が話題を呼んでいることを考えると、Netflixがこのプロジェクトを放置するとは考えにくい。もし続編が制作されるなら、鹿や歯といった象徴的な描写の意味、そして「なぜ世界が終わったのか」という核心に迫る展開が期待されるだろう。
闇夜の案内人ルクスの総評
『終わらない週末』は、表面的には「つまらない」「意味不明」と評価されがちだが、その曖昧さこそが作品の魅力だ。象徴的な描写の数々、ゆっくりと進行するストーリー、そして解釈の余地を残す結末――これらは、現代の映画が忘れがちな「考察の楽しみ」を観客に与えている。
君は、この映画が投げかける「現代社会の脆弱性」というテーマにどう向き合う？そして、次はどんな謎が解き明かされるのか。闇夜に響く鹿の鳴き声のように、この問いは君の心に深く残るだろう。観るか、観ないか？それは君の選択次第だが、この映画の闇に一度足を踏み入れたら、簡単には抜け出せないだろう――。
